- 第2編
- 終章 - 独立系信託グループとして未来をひらく
「実行・実践・実現」の加速
2023(令和5)年度には、世界における地政学的リスクの高まりの一方、日本ではコロナ禍を乗り越えて経済が正常化し、物価上昇が進んだ。岸田文雄内閣(第二次)が「資産運用立国 *1 」を標榜し、新NISAなどの施策を推進するなか、日経平均株価は5月に3万円台を回復、11月にバブル崩壊後の高値を更新し、2024年3月には一時初めて4万円を突破。日銀はついに2016(平成28)年から継続していたマイナス金利政策を解除し、デフレからの完全脱却と新たな成長型経済への移行に向けた動きが加速した。当グループは、創業100年となる2024年度を「実行・実践・実現」の年と位置づけた。経済環境としては「資金・資産・資本の好循環」の実現に向けた追い風のなかでスタートを切ったといえる。
「実行・実践・実現」に向けた目標は、①好循環の推進力となる「アドバイザリ」「資産運用」「資産管理」機能の三位一体型ビジネスモデルの強化、②お客さまとの長期信任関係の基礎となる「フィデューシャリーの高度化」、③当グループの持続的成長や社員のWell-beingを高める「生産性・採算性の向上」とした。政策保有株ゼロに向けた活動も一層推進し、創出した資本を社会課題の解決や将来への成長投資に用いて成果の顕在化をスピードアップする計画である。
2023年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(「骨太方針」)に「2,000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する『資産運用立国』を実現する」と明記。同年を「資産所得倍増元年」と位置づけ、「貯蓄から投資へ」の流れを促進するため、2024年1月からの新NISA(口座開設期間の恒久化、非課税保有期間の無期限化、年間非課税枠の大幅拡大など)導入を打ち出した。

資金・資産・資本の好循環を実現する3つの機能
2024年4月には、経営戦略の「実行・実践・実現」の加速とより一層の好循環の促進を目的に、三井住友信託銀行の機構再編を実施。「プライベートバンキング横断領域」「資産形成層(職域)横断領域」の両横断領域(ともに個人事業・法人事業・投資家事業横断)を「個人事業」に戦略的に統合し、資産形成層から富裕層まで、お客さまの資産状況に応じたトータルコンサルティングを実現する体制とした。個人事業については、オンラインコンサルプラザを拡充し、コンタクトポイントを増加させるとともに、ライフアドバイザリー支店との連携により、さらなるコンサルティング力の強化を目指すこととしている。なお、組織については「プライベートバンキング業務推進部」および「ライフアドバイザリー部」を「横断部」として各事業を横断する役割・機能を強化し *2 、一層の取引活性化を図った。
また、2024年4月には、「Future X」プロジェクトを立ち上げ、7月に全事業・全管理部署において推進体制を構築し、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)を推進。グループを挙げて業務プロセス改革に取り組むことにより、Well-being向上につながる働き方改革、そして風土・文化の変革を目指している。