- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
資産流動化業務への積極的取り組み
不動産市況が低迷するなか、不動産売買の仲介実績なども大きく下落し、苦境が続いた。他方、企業が合理化や資金化のため不動産を売却する傾向が強まり、その手法として流動化・証券化のニーズが高まった。また、金融資産の運用難のもとにある機関投資家等から不動産マーケットへ資金が流入するなど、新たな不動産マーケットが出現した。このような状況を踏まえ、不動産投資や証券化の総合的なコンサルティング業務が進展していく。
住友信託銀行は、1991(平成3)年に売掛債権信託を開発するなど早くから流動化業務に取り組んだ。また信託銀行の強みである信託方式に加え、1998年9月に「資産の流動化に関する法律」(SPC法)が施行されると、信託銀行で初めてSPC(特別目的会社)方式を導入しABS(資産担保証券)の発行をアレンジした。一方、三井信託銀行は、これに次いで2番目のSPCを設立しABS発行をアレンジしたが、不動産の収益を裏づけとする証券を、格付を取得して発行したのは国内初であった。こうして幅広く流動化業務を手がけ、両社は質・量ともに国内全金融機関でトップクラスとなっていった。
債権流動化は、調達企業が保有する資金の信用力によっては、自己の信用で調達する場合に比べて低コストで資金調達が可能となる。一方、投資家にとっては、償還原資の安全性の向上が図られることとなり、有利で安全な運用を求めるニーズに合致したのであった。