- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
大手行の2008年度赤字決算
世界金融危機は日本経済に大きな影響をもたらし、金融機関は融資先企業の業績悪化と株価の下落に苦しんだ。不良債権処理損失と海外投融資関連等の減損処理が拡大し、中央三井トラスト・ホールディングスを含む大手行の多くが2009(平成21)年3月期決算で最終赤字に陥った。住友信託銀行でも大きく減益となったが、かろうじて79億円の利益を確保した。
中央三井トラスト・ホールディングスは、株価変動による財務上の不安定要素の縮減および自己資本比率規制上のリスクアセットの削減を目的に、国内株式関連投資のうち2,482億円を売却した。これにより国内株式関連投資残高の約9割が圧縮されて有価証券の評価損益は改善され、リスクアセットが約4,400 億円削減されたものの、2009年度3月期の連結純損益は920億円の赤字となった。こうして同社の「経営健全化計画」における収益目標と実績は大幅に乖離し、2,000億円の公的資金を予定どおり7月末までに完済することが難しくなった。そして2009年7月、金融庁から、有価証券投資リスク管理における実効性ある具体的改善策、抜本的な収益改善のための方策を織り込んだ業務改善計画を提出し、着実に実行することなどを内容とする業務改善命令を受けることとなった。なお、中央三井トラスト・ホールディングスが公的資金の返済を延期した結果、8月に政府保有の優先株が議決権のある普通株に転換され、政府が30.2%を保有する筆頭株主となった。
世界金融危機は、一時的な逆境にとどまらず顧客や市場の価値観、ニーズ、行動のすべてを大きく変化させた。住友信託銀行は、この「新環境」において金融仲介機能を十分に発揮し、かつ持続的成長を実現していくため、2009年9月に第三者割当により優先株式を発行し、住友グループおよび親密取引先各社から1,090億円を調達。自己資本を強化し、より高水準の財務基盤を確保した。