- 第2編
- 第1章 - 専業信託銀行グループとしての挑戦 2011~2016
主要戦略の推進
当グループは、経営統合によって、銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業を融合した日本最大かつ最高のステイタスを誇る専業信託銀行グループとしてふさわしい経営管理体制を構築した。そして、目指す姿(ビジョン)である「The Trust Bank」を実現すべく、メガバンクグループとは一線を画した事業モデルの確立を目指し、経営統合に先立って2010(平成22)年8月に策定した「統合基本計画」に基づき、ワンバンクとして以下の戦略を実行していった。
〈基本戦略〉
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最高水準の商品・サービスによるトータルソリューションの提供
各事業分野で長年にわたり培ってきた高度な専門性と総合力を活かして、お客さまのニーズに対し、最高水準の商品・サービスによるトータルなソリューションを提供する。 -
戦略分野への重点資源配分とシナジーの追求
経営統合により拡充された経営資源を、当グループが競争力を有し、かつ成長性や各事業間での相乗効果が期待できる戦略分野に対し重点的に配分することで、収益力を強化し安定的・持続的な成長を実現する。 -
財務の健全性と資本の効率性の両立
質・量ともに充実した自己資本を確保し健全な財務基盤を維持するとともに、信託機能を活かしたフィービジネスの強化を通じて資本効率性の向上を目指す。
〔1〕投信・保険等販売によるフィービジネス強化
経営統合後の「成長戦略」の一つは、フィービジネス(手数料業務)の強化であった。当グループの強みの一つは、投信・保険等販売業務、資産運用・管理事業、不動産事業などにおける手数料業務であり、同業他社の事業粗利益に対する手数料比率が30%前後であるのに対し、当グループの手数料比率は40%程度となっていた。そこで、フィービジネスへの資産配分によって市場開拓・シェア拡大を目指すこととし、他の銀行グループに比べて優位な手数料比率を中期的にさらに拡大するため、販売額において邦銀トップクラスを誇る投信・保険等販売業務に特に注力。投信・保険等の販売では、経営統合に伴い間接部門からシフトする500人強のうち、400人程度を営業担当者として配属することで販売体制を強化するとともに、販売チャネル強化策として、既存店舗網の再編とあわせ、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を中心とした新規出店を検討し、さらに確定拠出年金や職域といった信託銀行が強みを有するチャネルや、インターネットなどを活用し、効果的なマーケティングを展開した。
また、グループ運用子会社の商品開発力、販売サポート力をより一層活用するだけでなく、①戦略的商品の相互供給による商品ラインアップの充実、②人材交流によるノウハウの共有化、③セミナーの共同開催などにより、商品提供力・資産運用コンサルティング力を強化した。加えて、富裕層向け戦略商品であるファンドラップの販売人員を大幅に増強し、富裕層顧客基盤と販売額の拡大に取り組んだ。

手数料収益比率の推移(連結)
〔2〕資産運用・管理事業におけるチャネル拡充
資産運用・管理事業では、企業年金や公的年金をはじめとする国内機関投資家の資産運用・管理を行うことで培われた資産運用・管理におけるブランドやノウハウを、個人や海外顧客向けに展開。さらに、アジア株を中心とした外国株式の運用力強化を図った。リテール向け、グローバル向けの資産運用では、中央三井アセットマネジメントと住信アセットマネジメントのノウハウを結集することにより、商品開発力と販売サポート力を抜本的に強化するとともに、提携金融機関が持つネットワークを活用し、個人・法人向け販売チャネルを拡充した。
運用子会社の三井住友トラスト・アセットマネジメントと日興アセットマネジメントについては、投信運用事業の成長を担う両輪として戦略的に育成。海外での運用受託では、当グループのネットワークのほか、海外金融機関との提携等も活用し、投資家の開拓を加速した。
〔3〕不動産事業による総合力の強化
銀行・信託業務に加え、不動産事業を行うことで、より総合的な資産運用・管理をお客さまに提供できることが、当グループの強みである。そこで統合によって拡充された顧客基盤、情報、個人の力と組織力を融合した営業体制の確立により、不動産事業における信託No.1を目指した。
第一に、不動産仲介業務では、投資ファンドなどのプロ投資家に厚い顧客基盤を有する中央三井信託銀行と事業法人に強い顧客基盤を持つ住友信託銀行が互いのノウハウを融合させることで、不動産関連情報量の拡大、マッチング力の強化を図った。また、不動産の有効活用、建築コンサルティング、環境コンサルティング、財務コンサルティングなど付加価値を伴った売買仲介を推進し、不動産市況の影響を受けにくい収益構造の構築を目指した。第二に、不動産証券化関連業務では、統合により拡大する顧客基盤を活用し、国内外の投資家からの不動産証券化受託を強化した。また不動産管理システムの統合による業務効率化を通じて、より低コストでの運営を推進した。不動産投資顧問業務については、2012(平成24)年4月の不動産投資顧問会社統合に向けた協議を進めるとともに、信託銀行の強みを生かし、年金基金・機関投資家や海外投資家へのマーケティング強化を図った。
〔4〕基礎収益力の強化
成長戦略として、フィービジネスと両輪をなすのは「基礎収益力」の強化であった。当グループは、統合により補完・拡充された顧客基盤を活用してよりバランスのとれた貸出ポートフォリオを目指すこととし、銀行事業の強化を進めた。
統合により飛躍的に補完・拡充された法人顧客基盤を生かし、グループの多彩な機能を融合したトータルソリューションを提供する「戦略的パートナー」としてのプレゼンスを向上させるとともに、個人のお客さま向けの住宅ローンを中核的アセットの一つとして拡大し、よりバランスのとれた貸出ポートフォリオの構築を図った。具体的には、顧客基盤の拡充および取引地位の向上を活用し、シンジケートローン、金銭債権流動化、証券代行、年金信託、M&Aアドバイザリーなど、グループの多彩な商品・サービスを提供。さらに学校法人・金融法人のお客さまへの市場性金融商品・私募投信販売といった投資営業の推進に加え、中央三井信託銀行の顧客基盤に対する海外日系向け貸出に注力し、事業法人向け貸出規模の維持・拡充に取り組んだ。
また、住宅ローンでは新規実行額で国内銀行シェア1割程度を目指し、さらにグループ内の相互の顧客紹介活動を徹底するとともに、さまざまなニーズに応え得る多様な販売チャネルを最大限に活用し、グループ全体での個人ローン残高拡充を図った。

住宅ローン新規実行額と国内銀行シェアの推移

個人向け貸出残高の推移