三井住友トラストグループ

第1章

専業信託銀行グループとしての挑戦
2011~2016

第4節 グループ総合力の発揮

第2章

The Trust Bankへの進化――
「第2の創業」 2017~2019

第2節 ビジネスモデルとガバナンスの変革

第3節 トータルソリューションの追求

第3章

新たな社会課題への対応
2020~2023

第2節 社会的価値創出と経済的価値創出の両立

第3節 新たな付加価値の創造

第4節 Well-beingの好循環を目指して

第2編
第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019

気候変動を巡る国際的な対応~パリ協定とTCFD提言

気候変動を巡る国際的な対応の基盤の一つにパリ協定が挙げられる。京都議定書では、新興国を温室効果ガス(GHG)の削減義務対象としておらず、先進国の主要排出国である米国も離脱していた。そのため、2015(平成27)年に開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、2016年11月正式に発効、米国や新興国を含む「すべての国が参加する新たな枠組み」が構築された。

これと並行して、G20でも金融における気候関連問題の検討が進められ、傘下の金融安定理事会(FSB)に対して、気候関連問題について金融セクターがどのように考慮すべきか検討するため、官民の関係者招集を要請。2015年12月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が設立され、2017年6月に「TCFD提言」を公表している。

TCFD提言は、市場は急激な修正に脆弱であることから、リスクに関する情報が不十分な場合、資産の誤った価格設定や資本配分の誤りを通じて、金融の安定性に関する懸念が生じる可能性があるとの考え方に立っている。そのため、投資家等が財務上の意思決定を行うためには、投資先における気候関連のリスクと機会が将来のキャッシュフローや資産・負債にどのように影響するか理解する必要があるとして、企業等に対し気候変動関連リスクおよび機会に関する項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)について開示することを推奨した。なお、提言の一つの特徴として、気候変動が将来、企業の事業に及ぼしうる超長期(数十年)の影響について分析するシナリオ分析を推奨していることが挙げられる。

当グループでは2018年8月にTCFD提言に賛同 *1 して以来、バンキングワーキンググループ、アセットマネジメントワーキンググループがそれぞれにポートフォリオについて気候関連のリスクと機会を特定し、分析を継続。また2019(令和元)年5月に設立されたTCFDコンソーシアム *2 に参加。経営企画担当役員を責任者としてTCFD対応推進プロジェクトチームを立ち上げるなど、同提言への対応を加速させている。2020年度の「統合報告書」においては、TCFD提言に沿って、移行リスク *3 ・物理的リスク *4 のシナリオ分析の開示にもチャレンジした。一方、2013年以降、ESGレポートの小冊子版として「気候変動レポート」を開示してきたが、これを改訂し、2020年12月、「TCFDレポート2020/2021」を発行。本レポートでは、当グループの気候変動への取り組みをできる限り詳細に伝えていくこととした。

2018年8月当社および日興アセットマネジメント、2019年2月三井住友トラスト・アセットマネジメントが賛同

TCFD提言の公表を受けて、経済産業省は2018年8月よりグリーンファイナンスと企業の情報開示のあり方に関する「TCFD研究会」を開催し、同年12月に「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」の初版を公表。ここでの議論を踏まえ、「TCFDコンソーシアム」が設置された。企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断につなげるための取り組みについて議論を行うことが目的。経済産業省、金融庁、環境省が当初よりオブザーバーとして参加している。

低炭素経済への移行に伴い生じるリスク。政策・法的リスク(GHG排出価格の上昇、既存商品やサービス等に対する規制など)や技術リスク(技術革新等により生じ得る自社の競争力・生産コスト等へのリスク)、市場リスク(顧客行動の変化、市場需要の不透明化、コスト上昇など)、レピュテーショナル・リスク(顧客需要の変化、特定の産業セクターへの非難、ステークホルダーのリスク対応への懸念または否定的反応など)がある。

気候変動により資産に対して直接・間接に生じるリスク。台風や洪水等の個別の気象事象により突発的に引き起こされる急性リスクと、海面上昇や熱波を引き起こす可能性のある希少パターンの長期的な変化による慢性リスクの2つに分けることができる。

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