- 第2編
- 第1章 - 専業信託銀行グループとしての挑戦 2011~2016
世界経済の減速と回復
経済のグローバル化の進展により、一国の経済危機が世界に波及するようになった。第1編で見たように、2007(平成19)年から翌年にかけて起こった米国サブプライムローン問題は、米国の金融機関のみならず、欧州の金融機関も巻き込んで世界金融危機へと発展した。同ローンの証券化商品によって信用リスクが世界に拡散したのである。
欧米の金融当局は緊急の資金支援や政策金利の引き下げなどを行ったが、住宅価格や関連証券化商品の価格下落に歯止めはかからなかった。そして、2008年9月、米国第4位の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが事実上破綻し、金融市場は大混乱に陥った。このリーマン・ショックの影響のもと、中央三井トラスト・グループと住友信託銀行グループは、手を携えて危機を乗り越えていくため、「The Trust Bank」として経営統合を行う道を決断したのだった。
一方、こうしたなかにあって比較的高い成長率を維持してきた中国などの新興国でも、景気減速の動きが広がった。2015年に入ると、前半から中盤はギリシャの債務危機問題の再燃に揺れ、8月から9月は人民元切り下げをきっかけに起こった中国ショックを背景に世界同時株安が起きるなど、金融市場は揺れ動いた。シリア情勢の悪化から大量の難民が欧州に流入して経済の重荷となり、難民問題を通して欧州統合のあり方も大きなテーマとなった。
2016年の国際金融市場は、中国経済に対する懸念、原油価格の下落、英国におけるEU離脱(ブレグジット)を問う国民投票、中東・アフリカでの政情不安に起因するテロなどの地政学的リスクの影響などを背景に、景気の下方リスクが意識された。だが、同年後半には中国経済に持ち直しの動きが見られるようになり、世界経済は全体として緩やかな回復軌道に乗った。