三井住友トラストグループ

第1章

信託制度の確立と発展
1922~1974

第3章

金融激動と業界再編
1991~2010

第1編
第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010

住友信託銀行におけるUFJ信託銀行統合問題

2004(平成16)年1月に公的資金を完済して攻めの経営に転じた住友信託銀行は *1 、資産の運用と管理の分野で本邦最強となることを目指し、そのための施策としてUFJグループとの間で協働事業化の検討を進め、同年5月21日、UFJ信託銀行との経営統合によるUFJグループとの信託・財産管理事業等の協働事業化について合意したことを発表した。本協働事業は、グループを超えた「選択と集中」の実現を図るとともに、相互の協働を通じて住友信託銀行グループとUFJグループの各々が強みとする事業の専門性、競争力を強化し、収益力の抜本的改善を図ることを目的としていた。

しかしながら、2004年7月14日、事態は思わぬ展開を見せた。UFJホールディングスから、信託・財産管理事業等に関する協働事業化を白紙撤回したい旨の申し入れがあったのである。そして、UFJホールディングスは三菱東京フィナンシャル・グループに経営統合の申し入れを行うとの発表を行った。そこで、住友信託銀行は、2004年5月21日付基本合意書に基づき、UFJホールディングスほかUFJグループ各社に対し、UFJ信託銀行の営業の承継に抵触する第三者との間の協議の禁止、および第三者への情報提供の禁止を求めて、東京地方裁判所に交渉禁止の仮処分命令の申し立てを行い、この趣旨について次のようなコメントを発表した。

この度の事態は、誠に遺憾ながら、日本を代表する金融機関が、正式な手続きを経て合意した契約条項を、一方的に破棄するという異例なものであります。かかる事態が前例として容認された場合には、わが国自由主義経済を支える根本となる法的土台が崩れることにもなりかねず、ひいては諸外国からわが国経済への信用が損なわれるという結果を生む懸念なしとしません。わが国における企業活動が、法令遵守の徹底や厳格なコーポレート・ガバナンスを通じて行われ、企業の社会的責任が全うされている姿を内外に示すことは、単に我々自身の権利保全にとどまることなく、広くわが国経済全体の公益にも合致するものと考え、司法の公正な判断を仰ぐこととしたものです。

その後、2004年7月27日、東京地裁はこの申し立てを相当と認め、UFJ3社に対し、第三者との協議と情報提供を禁止する仮処分を決定した。これに対し、UFJグループは東京地裁へ保全異議申し立てを行ったが却下され、仮処分を認可する決定が下された。

2年以上に及ぶ裁判手続きを通じて一貫して主張してきたことは、契約の遵守の必要性であった。この裁判では、M&Aにおける当事者間の合意の有効性と遵守の必要性など、従来あいまいにされてきたことが焦点となり、法曹界のみならず社会的にも注目を集めた。信託同士での統合を目指していた住友信託銀行にとって忸怩たる出来事ではあったが、これ以前も以後も商業銀行とは異なる独自の「強い信託銀行」を中心とする金融グループを目指し、信託ならではの社会的使命を果たしていくという立場は一貫して変わらなかった。

1998年3月に導入した公的資金1,000億円は2003年3月に返済するとともに、2004年1月、1999年3月に導入した公的資金2,000億円のうち整理回収機構が引き受けた優先株式1,000億円を第三者(親密取引先29社)へ譲渡してもらい、期限付劣後債1,000円を買入償却し完済した。

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