三井住友トラストグループ

第1章

信託制度の確立と発展
1922~1974

第3章

金融激動と業界再編
1991~2010

第1編
第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010

リテール分野への注力と企業年金の拡大

1998(平成10)年12月に投資信託の窓口販売が開始されて以来、信託各社はグローバルな観点から、多様化、高度化する顧客の資産運用ニーズに応えることを目的に、商品ラインアップを拡充。リテール業務を中核として投資信託の販売に積極的に取り組んできた三井信託銀行は、1998年12月に大手行では初となる投資信託専用の有人チャネル「投信センター *1 」を新宿西口支店内に開設し、拠点を拡大していくとともに、専用ファンドを用意するなど、特色ある商品を取りそろえていった。

個人年金の分野では、2002年10月には銀行による個人年金保険商品の窓口販売が解禁された。個人年金保険は、運用機能に加えて、保険機能・年金機能が一つになった金融商品で、長引く低金利やペイオフの解禁に対する備えの手段となった。加えて、相続対策に有効な保険機能は、顧客の資産承継コンサルティングにおいて、家族構成やライフプラン、資産状況など取引全般にわたる有用な情報の獲得に効果を発揮。次世代に資産を残す手段として信託銀行のビジネスモデルにマッチするものであった。

企業年金の分野に目を向けると、2001年10月「確定拠出年金法」、2002年4月「確定給付企業年金法」が施行され、企業年金の運営に関する選択肢が広がって、コンサルティングニーズも高まった。2001年10月、住友信託銀行は確定拠出年金専用定期預金「すみしんDC定期預金」を開発。同時に、投資信託についても住信アセットマネジメントと協働で確定拠出年金専用である旨を約款に明記した国内初の投資信託「すみしんDCマイセレクションシリーズ」、2002年1月にはアクティブ型投信を設定した。これらは、長年にわたる年金運用のノウハウが生かされたものである。

一方、中央三井トラスト・グループでは、2002年7月に確定拠出年金制度を導入することが決まったトヨタ自動車から、三井アセット信託銀行が制度設計、導入コンサルティング、資産管理を受託し、商品として「中央三井DC 日本株式インデックスファンドL」が採用された。さらにトヨタからは2002年12月にグループ各社に導入された「連合型確定拠出年金」における運営管理、資産管理業務および運用商品の提供を受託している。

このように年金運用に関する規制が緩和され、企業年金市場において競争が激化する一方で、年金受給権の保護という観点から、受託者責任の強化が叫ばれるようになった。2002年4月には退職給付会計が導入され、退職給付債務はPBO(予測給付債務)として時価評価されることとなり、この債務を企業会計上の債務として財務諸表に計上しなければならなくなった(オンバランス化)。こうして年金負債と年金資産の変動が企業の決算や株価に大きく影響することになったのである。

「投信センター」は新宿西口に続いて梅田、横浜駅西口に拠点を拡大。その後2004年6月にチャネル戦略の一環で「コンサルプラザ」に一斉に変更し利便性を強化した。

業界初の投信センター(三井信託銀行新宿西口支店)

業界初の投信センター(三井信託銀行新宿西口支店)

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