- 第1編
- 第1章 - 信託制度の確立と発展 1922~1974
戦時金融の清算
戦争経済の崩壊に伴い、戦時金融機構の一翼を担っていた信託会社もその体質を変革する必要に迫られた。もちろんそれは信託会社に限られたものではなく、各金融機関共通の課題でもあった。
金融機関にとって敗戦の打撃は、まず経理上2つの面から表れた。一つは、軍事補償の打ち切りによって貸出先企業での損失が発生し、貸出の回収が不能となったこと、もう一つは、発行者の破綻・清算、内容悪化によって所有有価証券が評価減となったことである。もちろん信託会社でも膨大な損失が発生したが、信託会社の場合、軍需企業への直接貸出が少なく、資金統合銀行への貸付の形をとっていたため、資金統合銀行の清算・回収の能否が重大な問題であった。
さらに戦後のインフレの高進が貨幣価値の低落と預貯金引出の急増をもたらし、金融機関の経営を著しく悪化させていた。政府は、預金流出に伴う金融機関の破綻防止策として1946(昭和21)年2月17日に「金融緊急措置令」を発出、預貯金封鎖の措置がとられ、信託会社の金銭信託も封鎖されて解約を免れた。また同時にインフレ対策として通貨の新円への切り替えが実施された。

新円への交換(毎日新聞社撮影)