- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
80年ぶりとなる「信託法」「信託業法」の抜本的見直し
信託業法は、信託法とともに1922(大正11)年4月に公布、翌23年1月に施行されたが、その後80年以上、見直しは行われてこなかった。しかしながら、その後の経済・社会の発展に伴い、証券化スキーム等において信託が果たす役割の重要性が認識されるようになり、信託銀行以外の会社でも信託業の担い手となってさまざまな信託商品を提供したいとのニーズが高まってきた。例えば、自社グループ内での知的財産権の一元管理や事業会社独自のノウハウを生かした信託の受託などのニーズが挙げられる。このような状況を踏まえ、2004(平成16)年12月に新しい信託業法が制定され、これによって信託の裾野が広がり、競争が一層促進されることとなった。新信託業法のポイントとしては次のようなものが挙げられる。
- 受託可能財産の範囲の拡大(知的財産権や担保権を含む財産権一般へ拡大)
- 信託業の担い手の拡大(信託銀行以外の事業会社等へも拡大)
旧信託業法が、当時乱立していた信託会社を取り締まるための法律であったのに比べ、新信託業法は信託本来の役割の重要性の高まりを踏まえた内容となった。
さらに、2006年には信託法も抜本的に見直されることとなった。信託法制定以降の経済・社会の発展に伴い、信託制度を利用した各種商品が生まれ、また、証券化における信託の活用など、制定当時には想定されていなかった形で信託が利用されるようになっていた。これらを背景に、信託法の全面見直しの気運は大きく高まり、ついに2006年12月に新信託法が国会で成立、2007年9月に施行されたのであった。新信託法のポイントとしては次のようなものが挙げられる。
- 規制色の強い旧法から、当事者の私的自治を尊重する内容への変更
- 受益者の権利行使の実効性、機動性を高めるためのきめ細かなルールの制定
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信託を多様な形で利用するというニーズに応えるための新類型の創設
(受益証券発行信託、限定責任信託、目的信託、自己信託、事業信託等)