- 第2編
- 第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019
住信SBIネット銀行のデジタル戦略
グループ関係会社である住信SBIネット銀行は、FinTech事業領域においても、「FinTech事業企画部」や「ビッグデータ部」を中心に、AIやAPI *1 等の先端技術を積極的に活用し、お客さまの利便性の向上に資する商品・サービスの開発を進めた。同社は、2016(平成28)年に勘定系業務における国内初のブロックチェーン実証実験に成功したほか、AIの活用においても、貸出業務における先進的なローン審査方法に関する実証実験を行った。
また、提携先企業のサービス向けにAPI連携を積極的に推進し、いずれも国内銀行では初となる、振り込み連携機能の提供、参照系APIを活用したロボアドバイザー(自動資産運用サービス)と更新系APIによる自動貯金サービスの提供を開始した。加えて、電子商取引におけるビッグデータを活用した事業性融資サービス「レンディング・ワン」のサービス提供も開始しており、FinTech分野のイノベーションを個人のお客さまの利便性向上のみならず法人のお客さまの企業価値向上にもつなげている。取り組み例は以下のとおりである。
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AI審査サービスの提供
日立製作所と住信SBIネット銀行は、日立の高性能AIと住信SBIネット銀行の与信ノウハウを組み合わせたAI審査サービスを提供する合弁会社Dayta Consulting株式会社を設立。第一弾として、2019年10月から地域金融機関に対し、住宅ローンのAI審査サービスの提供を開始した。資金決済情報などに基づいて融資を行うトランザクション・レンディングやカードローンなどにも、AI審査サービスの適用範囲を順次拡大した。 -
キャッシュレス市場への取り組み
住信SBIネット銀行は、クレジットカードやQRコード決済等の決済端末・決済システムの提供や、金融機関向けのセキュリティソフトの開発を行うネットムーブ株式会社を2019年4月に子会社化した。銀行によるFinTech関連企業の買収による子会社化は日本で初めての事例となった。今後も継続的な拡大が見込まれるキャッシュレス市場の需要を取り込むだけでなく、決済データのレンディング等への活用等、ネットムーブの持つ機能と住信SBIネット銀行の銀行サービスを融合させた新たなサービスを提供していくこととした。
2017年、住信SBIネット銀行は、「NTTコム オンラインNPS *2 ベンチマーク調査 銀行部門」において業界第1位の評価を獲得(以後3年連続で受賞)。同社は2016年にNPSを導入し、戦略的指標として活用してきた。近年は特にFinTech分野でのサービス拡充に力を入れており、日本初のAPI連携による家計簿サービスやロボアドバイザーによる運用商品の提供に加え、住宅ローンや中小企業向け貸出にAI審査を導入するなど、最先端の技術と金融商品を組み合わせたサービスの提供に努めている。また、資産運用を実施しているユーザーの割合も高く、SBI証券との連携による高い利便性やネットバンキングの操作性の良さ、手数料に関する高い評価が推奨理由となった。なお、2023(令和5)年には業界第2位から第1位に返り咲いている。「ネットバンキングの使いやすさ・わかりやすさ」や「公式アプリの使いやすさ・わかりやすさ」、「他の金融機関との連携の良さ・使い勝手の良さ」などがロイヤルティを醸成する要因になったと評価されてのことだった。
また、2019年11月には、コールセンターでのAIを活用した高度化による受電率の改善や相談・苦情件数の削減等の成果が評価され、公益社団法人企業情報化協会が主催する「2019年度(第37回)IT賞」において「IT優秀賞(顧客・事業機能領域)」を受賞。音声自動テキスト化ツールの活用を通じて、会話をリアルタイムでテキスト化することで、オペレーターのサービス向上と業務品質の向上を実現した。さらに、こうしたデジタル技術の活用により、2020年2月、「第16回日経金融機関ランキング調査」においても、「接客・利便性」が評価され、顧客満足度評価第1位を獲得した。