- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
グリーン水素サプライチェーン構築に向けた取り組み
三井住友信託銀行では、研究結果の社会への活用を目指して、2021(令和3)年4月、環境・エネルギー分野の専門家集団であるテクノロジー・ベースド・ファイナンス(TBF)チームを創設。同年9月、チームの第1号案件として、廃棄物発電事業者であるアサヒプリテック、大学発ベンチャーであるX-Scientiaおよびエフシー開発とともに、水素を低コストで製造するプロジェクトを立ち上げた。具体的には、廃棄物発電所の余剰電力の有効活用と水素を製造する際に排出される副産物を売却することで、水素製造コストを従来の3分の1以下に抑えることを可能とするものである。環境省地球環境局が公募した「令和3年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」において、「副産物の有効活用によるグリーン水素サプライチェーン構築に向けたシステム開発」を提案し、補助事業として採択。プロジェクトは、2023年度からの事業化を目指し、水素製造システムの開発および実証実験を2021年10月より開始した。
カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの普及拡大は、エネルギーの地産地消や大都市などの他地域への輸出など、地域経済の活性化にもつながり、サーキュラーエコノミーの観点からも望ましい。それらの実現には、再生可能エネルギーを短期には蓄電池に貯蔵し、長期には水素エネルギーへと変換し、必要なときにエネルギーを取り出せるシステムの経済性が求められる。再生可能エネルギーからつくられる水素はグリーン水素と呼ばれ、世界中で技術開発が行われているが、製造原価がきわめて高く、事業展開には至っていない。本プロジェクトでは、安価な未利用エネルギーと副産物を有効活用することで、グリーン水素製造の低コスト化を図り、経済的・合理的な水素のサプライチェーンを早期に実現することを目指した。