- 第2編
- 第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019
三井住友トラスト・アセットマネジメントの動向
〔1〕資産運用業務の統合
2018(平成30)年10月、法人・機関投資家向けの高い運用ノウハウや品質を有する三井住友信託銀行の運用機能を分割し、個人投資家向けの窓販ファンドやDC向けファンド、金融法人向けの私募投信等の投信ビジネスで業容を拡大してきた三井住友トラスト・アセットマネジメント(SMTAM)に統合。資産運用残高は、日本、そしてアジアで最大級の資産運用会社となった。
新生SMTAMでは、これまでグループが培ってきた年金基金など、大手機関投資家の要望に応える高品質な運用商品提供や、潜在的な課題解決に資する運用商品組成等の運用ソリューション、ノウハウを生かし、DC向けを含む個人投資家や、国内外の機関投資家向けに、さらなる付加価値を提供。超過リターンの高いアクティブプロダクトやスマートβプロダクトの開発や運用パフォーマンスの改善を進め、多くのお客さまから「中長期投資といえば、三井住友トラスト・アセットマネジメント」と認められる国民的なブランド力を持った資産運用会社を目指した。

三井住友トラスト・アセットマネジメント(住友不動産御成門タワー)

運用資産残高の推移
〔2〕ESGインテグレーションとエンゲージメント
SMTAMは「責任ある機関投資家」として、エンゲージメント、議決権行使、ESG課題への対応を3つの柱としてスチュワードシップ活動を推進。投資先企業の企業価値向上に資するスチュワードシップ活動を行うことを通じ、中長期的な投資リターンの最大化というゴールを目指した。2015(平成27)年以降、三井住友信託銀行が独自の非財務情報評価の仕組みであるMBISを取り込んで展開してきたESGインテグレーションの成果を受け(第1章第3節5「独自手法『MBIS』導入」参照)、2018年10月以降、SMTAMにおいて手法や対象資産の拡大によるESGインテグレーションの高度化を推進。ESG投資における評価項目と対応方針からなる「ESGマテリアリティ」の特定や外部ESGデータベンダー等によるESG評価も活用したMBIS評価の高度化などを行った。
さらに2019年6月には、英国の大手生命保険会社リーガル&ジェネラルグループ(L&G)の子会社であるリーガル&ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM) *1 とESG活動に関して協業することに合意。特に「気候変動」「ジェンダーダイバーシティ」「企業の透明性」等に着眼したエンゲージメント活動を中心とした活動に注力することとした。
SMTAMは、LGIMのスチュワードシップ活動に関わる知見や活動成果を活用することで、個別海外企業との気候変動問題などに関するエンゲージメント活動を一層強化するとともに、国内におけるスチュワードシップ活動では、これまでのノウハウの蓄積をもとに、さらなる質的向上を図った。
〔3〕販売チャネル拡大に向けた取り組み
SMTAMでは、コア&サテライト戦略を通じて三井住友信託銀行の支店等での投信窓販を強化するとともに、地域金融機関でも公募投信の展開を進めてきた。しかしながら、2017(平成29)年3月末時点で公募投信残高(ラップ向け、DC向けを除く)の多くが三井住友信託銀行となっており、資産運用機能の分社・統合後を見据えた収益基盤の安定化や大手資産運用会社としてのプレゼンスの確立が課題となっていた。そこでSMTAMは、旗艦ファンドの集中的なプロモートに全社を挙げて注力し、特に大手証券、地銀を中心とした販路の拡大、すなわち「販社分散」を推進。また、既存のコアファンド、サテライトファンドもリプロモーションを継続しつつ、新たな旗艦ファンドを設定して「プロダクト」分散を目指した。
2017年12月に設定した「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」は、SMTAMの営業部門による集中的なファンド採用活動に加え、ファンド採用後の丁寧かつタイムリーな販促資料の提供やセミナー・勉強会対応などのプロモーション活動により、大手・中堅証券、地域金融機関など幅広い販売会社で採用・販売が進んだ。その後THE 5Gは、2021(令和3)年に残高が7,000億円を超えるなど、SMTAMの旗艦ファンドの一つとなるとともに、業界内でも主要なファンドに成長した。これにより、グループ外の証券、地銀等の販社網は大きく拡大し、販社基盤は強化された。