- 第1編
- 第1章 - 信託制度の確立と発展 1922~1974
信託の独立経営と3社連合
インフレ高進のもとで信託会社が経営難に陥るなか、戦後の新しい金融のあり方を議論する金融制度調査会では国営・国家管理や銀行への統合などが議論されていた。
これに対して信託各社は、1947(昭和22)年11月に信託協会として「信託業の将来および企業の在り方」を取りまとめて発表し、銀行への統合の議論について強く反対。個別的なサービスを基礎とする信託業において、公正な競争を停止することは進歩の停止を意味し、本来、信託業務は十分採算性のある事業であると提言したのである。
一方、各社の従業員組合においても、独立経営を堅持しなければならないという危機意識を持ち、1947年1月には住友信託からの呼びかけで三井、三菱、住友の3社連合を結成。合併に反対し、独立経営を維持していくとの意思を示した。
信託会社は一方で戦後処理を進行させながら、他方では存続していくための自立の道を模索した。銀行への合併話が持ち上がるなかで、大手信託会社の足並みは次第に独立の方向に揃っていった。