- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
日本初となるトランジションローン契約締結
三井住友信託銀行は、2021(令和3)年3月、川崎汽船を国際資本市場協会(ICMA) *1 が提唱したClimate Transition Finance Handbook *2 に即した評価対象とする日本初(当社調べ)の「トランジションローン」のシンジケートローン契約を締結した。トランジションローンは、気候変動リスクへの対応を検討している企業が、低炭素社会への移行に向けて、長期的な戦略に則ったCO2削減の取り組みを行っている場合に、その取り組みを支援する。企業が気候変動関連のリスクに効果的に対処するために掲げている科学的根拠に基づくクライメート・トランジション戦略とガバナンスおよびビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティを評価し、パリ協定の目標達成への活動を促進するものである。
川崎汽船は、「“K”LINE環境ビジョン2050」の中で、脱炭素化に向け2030年中期マイルストーンでは、「CO2排出効率2008年比50%改善」「社会の脱炭素化を支える新エネルギー輸送・供給の担い手に」をクライメート・トランジション戦略に掲げ、当該マイルストーンの達成に向けて、本件の資金をもって次世代型環境対応LNG燃料自動車専用船を取得した。また、パリ協定の2℃目標と整合するマイルストーンを設定し、脱炭素化に向けた取り組みを推進。三井住友信託銀行は、トランジションローン等のサステナビリティに関するソリューションの提供により、SDGsの目標達成に向けたお客さまの事業活動を支援するとともに、お客さまの中長期的な企業価値の向上に貢献することを目指している *3 。
1969年の設立以来、スイスに本部を置く国際団体。世界60カ国の発行体、発行市場・流通市場取引仲介業者、アセットマネージャー、投資家、資本市場インフラ運営者等500以上の会員から構成。市場のあらゆるセグメントについて、会員と活発に作業に取り組み、規制、市場や、これに関連して国際債券市場の市場慣行と機能に影響を及ぼす事項を優先課題とし、ICMAの任務は国際債券市場のレジリエンスと良好な機能を促進することとしている。
ICMAが2020年に公表したサステナブルファイナンスの枠組みの一つ
2021年9月には、川崎汽船に対して、本邦初となる「トランジション・リンク・ローン(TLL)」のシンジケートローン契約を締結。借り手のトランジション戦略と整合した「キー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)」と「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」を設定し、貸付条件と SPTs に対する借り手のパフォーマンスとを連動させ、SPTs 達成への動機付けを与えることで、借入人にトランジション戦略の実現に対するインセンティブを与え、社会における脱炭素化・低炭素化を促進させることを目指した。