- 第2編
- 終章 - 独立系信託グループとして未来をひらく
価値創造領域における取り組み
現在の中期経営計画において「価値創造領域」として注力している重点テーマは、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「エコシステム/グローバルインベストメント・バリューチェーン(ネットワーキング)」である。
「人生100年時代」では、引き続き認知症への備えや資産承継ニーズに応えるとともに、2024(令和6)年1月にスタートした新NISAをビジネスチャンスと捉え、スマートライフデザイナーや三井住友信託銀行NEOBANK *1 などの機能を活用しながら、資産形成層向けの年金・不動産を含むトータルコンサルティング強化を図っている。人生100年時代における資産形成と社会課題解決を両立する信託らしい商品の拡充を進めるなか、2024年10月には、個人投資家向けに社会的にインパクトのある投資機会を提供する新たな信託商品として、新型金銭信託「フューチャートラスト」の取り扱いを開始。この商品では、契約期間中の予定配当率が固定されているため、投資家は資産形成の手段として安心して長期保有することができる。そのうえ、商品への投資が社会課題解決に取り組むプロジェクトや企業への融資につながり、企業、そして社会全体の好循環を促進する。現在は元本補填付き商品であるが、将来的には実績配当型へと展開し、プライベートアセットを小口化して組み込み、プライベートアセットに対する認知度の向上を目指していく。
2023年9月にスタートした三井住友信託銀行公式アプリ「スマートライフデザイナー」の利用者が、三井住友信託銀行が提供するさまざまなサービスにあわせ、住信SBIネット銀行のネット銀行機能を利用できるサービス

新型金銭信託「フューチャートラスト」パンフレット
次に「ESG/サステナブル経営」では、脱炭素、人的資本経営を切り口として投資家との対話にウェイトを置き、企業の成長を強力にサポートすることで資本市場全体の健全な成長を図っている。当グループは、「E」だけではなく「S」では年金、「G」では証券代行の機能も活用し、ESGのすべての課題にソリューションを提供することができる稀有な存在であり、その機能を生かし、また各種サーベイの結果を活用し、エンゲージメント型営業モデルを推進している。なお、「E」では、2030年に向けてインパクトエクイティ投資に5,000億円を投じ、それを呼び水として投資家に対して2兆円の投資機会を提供するとともに、投資家の資金を合わせて15兆円のサステナブルファイナンスを提供する計画である。

「ESG/サステナブル経営」概念図
いずれの価値創造領域も前計画から重点テーマとしてきたものであるが、特に3つ目の「エコシステム/グローバルインベストメント・バリューチェーン(ネットワーキング)」では、一段ステージを進めて、当グループ単独ではなし得ない価値の実現に向け、多くのプレーヤーを巻き込む「エコシステム」の拡大、それによる社会変革の大きなうねりの創出を目指す。
当グループの特色は、全国の拠点をハブとして、多様な業務により地域の産・官・学・金との接点を立体的に有していることである。現在、国内では、地域に工場を有する重厚長大産業の課題解決に向けたトランジションプロジェクトや、地域の中核大学における技術のシーズを起点としたイノベーション企業育成の取り組みを進めている。このような各地域のプレーヤーを巻き込んだ「地域エコシステム」を全国に拡大し、さらにApolloグループやEnergy Capital Partners といったグローバル・インベストメント・バリューチェーンの機能や資金力によって、リアルアセットとしての不動産やプライベートアセットを軸に、好循環の動きを加速する。
当グループの多彩な事業や機能を融合しながら、多くのステークホルダーを資金の好循環の共感に巻き込んでネットワークを拡充し、広大なエコシステムを創り上げることができれば、インパクトを生む価値創造プロセスも大きく広がり、社会を動かす力となる。信託への期待が大きく高まっている今、当グループは、インベストメントチェーンの多くで社会インフラとしての役割を担うことを当グループ自身の成長の機会とし、好循環の実現と市場の拡大を図っていく。

ネットワーキング概念図