三井住友トラストグループ

第1章

専業信託銀行グループとしての挑戦
2011~2016

第4節 グループ総合力の発揮

第2章

The Trust Bankへの進化――
「第2の創業」 2017~2019

第2節 ビジネスモデルとガバナンスの変革

第3節 トータルソリューションの追求

第3章

新たな社会課題への対応
2020~2023

第2節 社会的価値創出と経済的価値創出の両立

第3節 新たな付加価値の創造

第4節 Well-beingの好循環を目指して

第2編
第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023

金利指標改革~LIBOR廃止への対応

短期金利の指標として長く使われてきたロンドン銀行間取引金利(LIBOR:London Interbank Offered Rate)の大半 *1 が、2021(令和3)年12月末をもって、算出と公表を終了した。LIBORは、ロンドン市場で銀行同士が資金を融通する際の金利指標で、ドル、ユーロ、円、ポンド、スイスフランの主要5通貨を対象に、それぞれ7つの期間(テナー)、計35の金利が毎営業日公表されてきた。算出に参加する金融機関が金利を申告し、上位と下位の一定数を除外したものを平均して求められる。

LIBORは、金利スワップなどのデリバティブ契約で主に用いられていたが、企業向けの貸出や社債の発行条件などでも使われてきた金利指標であり、金融機関だけでなく、事業法人や機関投資家など多様な市場関係者に利用されてきた。しかし、2012(平成24)年に大手行が提示金利を操作していた不祥事が発覚し、市場実勢により近く透明な新指標に移るべきとの声が広がった。2017年7月、LIBORを監督する英金融行為監督機構(FCA)のベイリー長官(のちに英中央銀行総裁)が廃止方針を打ち出し、代替指標の策定など移行作業が世界で進められてきた。新指標は、ドルが「担保付翌日物資金調達金利(SOFR)」、円が「無担保コール翌日物金利(TONA)」などと通貨ごとに決められた。いずれも市場での取引に基づく実勢金利で透明性が高い。ただ、LIBORと違って相手方の信用リスクを反映せず、翌日物取引が基準であるため、指標金利として使うには金利差や期間の調整などが必要となった。備えのない状態でLIBORの公表が停止された場合、利用者への影響が懸念されたため、金融庁は、日本銀行をはじめとした関係機関とも連携して、金融機関、事業法人、機関投資家らに、LIBORからの円滑な移行に向けた対応の必要性について理解を深められるよう、ホームページ上での関連資料の掲載や利用状況調査の実施等により、市場全体の取り組みを支援した。

当グループは、LIBOR等の指標金利の廃止に際して、お客さまが引き続き後継指標等を利用できるようにするため、後継指標の金融商品やサポート業務プロセス・システムの開発に注力した。また、原契約の変更等を通じて、混乱なく後継指標に移行できるよう機能拡充に努め、業界団体やマーケット参加者と協力しながら、後継指標への移行を管理していくこととした。さらに、後継指標への移行により発生する可能性のあるリスクや結果をお客さまが確実に理解できるよう、お客さまとのコミュニケーション戦略を策定するなどの対応に努めた。

2023年6月末、ドルの一部テナー(期間)の公表終了をもって、すべての公表が停止された。ドルは参照する金融取引の残高規模が大きく、移行が難しい既存契約の混乱を避けるため、停止が延期されていた。

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