- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
新たな社会課題への対応
2020~2023
- 第1節
- コロナ禍のもとでの世界経済
1 多様化、深刻化する社会課題
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019(令和元)年12月、中国湖北省武漢における原因不明の肺炎として世界保健機関(WHO)に報告された。これをきっかけにその名が世間で認知され、日本でも2020年1月15日に国内初の感染者が確認されている。感染が世界的に拡大するなか、WHOは1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、3月11日には「パンデミック」を表明した。WHOの推計によると、2020年1月から2021年12月末までのCOVID-19に関連する世界の死者数はおよそ1,490万人に上る。2020年、COVID-19は社会のありようを大きく変えた。日本政府は2020年3月26日に対策本部を設置し、4月7日に緊急事態宣言を発令。緊急事態宣言下では、不要不急の外出の自粛や「3密」(密閉、密集、密接)を避けることが要請され、大企業を中心にテレワークやオンライン会議への移行が大きく進むなど、「ニューノーマル(新常態)」とされる状況が生まれた。コロナ禍での実質GDPの推移を見ると、2020年1~3月期以降、感染拡大の影響を受け始め、2020年は前年度比マイナス3.9%と、大規模な財政出動が実施されたなかにあっても、リーマン・ショック後の2009年以降最大の落ち込みとなった *1 。
2020年末以降、欧米諸国を皮切りにワクチン接種が進展するなかで経済社会活動の正常化に向けた取り組みが進み、感染症と経済の関係は大きく変化。日本でも、ワクチン接種の進展等を受け、2021年秋以降、ウィズコロナの考え方のもと、経済社会活動の正常化に向けた取り組みが進められ、感染拡大が経済に与える影響は緩和に向かった。2022年には個人消費が飲食・旅行などの対面サービスを中心に持ち直し、好調な企業収益のもと、設備投資も高水準で推移するなど、内需は緩やかに回復。2023年5月にWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を解除したことに伴い、日本でも感染症法上の分類が5類に引き下げられ、社会経済活動の正常化が進んだ。