- 第2編
- 第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019
2 マイナス金利とデジタル化への対応
マイナス金利政策の決定
日本銀行は、物価上昇率2%を目指して2013(平成25)年4月に「量的・質的金融緩和」を導入して以降、翌2014年10月に「量的・質的金融緩和」の拡大、2015年12月に「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、そして、2016年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定し、同年7月、「金融緩和の強化」を行った。
こうした日銀の超低金利政策によって、住宅ローン金利も歴史的に低い水準が続いた。一方で、マイナス金利政策は、主に銀行間で取引される短期金利を抑え込むものだったが、その異例の政策で超長期を含む金利全般がさらに低くなった。超長期の国債などに投資する年金基金の運用が難しくなったり、金融機関が貸し出しによる利ザヤを得にくくなったりと、緩和の副作用も大きくなった。
そのため、日銀は2016年9月の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証を行い、その結果を踏まえて、金融緩和強化のための新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決めた。
この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の政策枠組みは、2つの要素から成り立っていた。第一に金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブコントロール」、第二に消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」だった。
このように、日銀がさまざまな手法で、金融機関へのマイナス金利付利の影響を緩和したことから、金融機関は、日銀当座預金におけるマイナス金利の直接的な影響はある程度回避できたものの、貸出金利と預金金利の利ザヤ縮小の問題は解決されないままとなった。
当社は、収益全体に占める手数料比率が高く、マイナス金利政策の影響は相対的に軽微だったものの、国内の預貸収支の悪化や不安定な国際金融情勢のなかで外貨調達費用は増加基調にあり、資金ビジネスには逆風だった。こうしたなか、信託関連業務等の手数料ビジネスを成長の機会と捉え、当グループでは幅広い世代の資産形成、成熟した経済のもとでの資産管理・承継など、信託銀行ならではの機能拡大を目指した。