三井住友トラストグループ

第1章

専業信託銀行グループとしての挑戦
2011~2016

第4節 グループ総合力の発揮

第2章

The Trust Bankへの進化――
「第2の創業」 2017~2019

第2節 ビジネスモデルとガバナンスの変革

第3節 トータルソリューションの追求

第3章

新たな社会課題への対応
2020~2023

第2節 社会的価値創出と経済的価値創出の両立

第3節 新たな付加価値の創造

第4節 Well-beingの好循環を目指して

第2編
第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
Topic

「森林信託」の受託~サステナブルな森を

岡山県西粟倉村は、村の面積の93%を森林が占める。そのうち84%が戦後に植樹されたスギ、ヒノキの人工林である。人工林を健全に維持していくには適切な管理が必要だが、戦後半世紀が過ぎ、人口減少や産業構造の変化が生じるなかで、同村の森林域では手入れの行き届かないエリアが増加しつつあった。そこで西粟倉村は、2008(平成20)年に「百年の森林(もり)構想」を掲げ、森林を百年先まで豊かに保ち、木材の価値を生かして地域創生を図ることとした。

西粟倉村は、役場が森林所有者から森林を預かり、森林の間伐、作業道整備を行う取り組みを目指したが、費用の確保、維持管理していく仕組みづくりが課題となった。そこで2017年11月、当グループは、西粟倉村から「森林信託導入基礎調査」を受託。事業スキーム構築に向けた課題とその対応策について検証した。また2018年12月には、信州大学が進める森林計測・解析技術研究に基づく認定ベンチャーである精密林業計測株式会社に出資(第三者割当により発行株式の約2.3%相当を取得)。同社は、ドローンを使った上空からのレーザーセンシングによる高精度な森林の計測・解析技術を有しており、その技術は「森林信託」の取り組みに不可欠であった。

森林信託の実現に向けて、当グループは、信託財産の特定のために一定区域内の森林をレーザーで測量、3D化し、単木ごとの位置、樹種、胸高直径、エリア全体の材積(材木の堆積)データを取得。対象となる山林の経済的価値を把握し、信託期間中のキャッシュフロー計画の策定を可能とした。収益性の確保については、この地域の資産である豊富な水資源を活用し、小水力発電所を設置。村の出資と官民ファンドによるエクイティ出資で発電事業体を設立し、クリーンエネルギーによる収益を村の森林事業に投入する仕組みをつくった。

こうして当グループはオーダーメイドで信託の仕組みを開発し、2020(令和2)年8月、日本初(当社調べ)の商事信託「森林信託」受託に至り、過疎化や担い手不足による森林の荒廃という社会課題の解決や地域振興に寄与。現在は、林業そのものの復活に向け、デジタル技術と地域、企業、大学等によるネットワークにより、サプライチェーンの底上げを図っている。

西粟倉村の森林

西粟倉村の森林

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