- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
脱炭素化に向けた取り組み
国際社会は、脱炭素化に向けて大きく動いている。パリ協定(2015年)に基づいて、先進国・途上国の区別なく、すべての国が具体的な温室効果ガスの排出削減目標にコミットするなど、気候変動対策に向けた行動変容の重要性は国際的に認識されてきた。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による各国の経済活動の抑制措置により、一時的ではあっても、大気汚染やCO2の排出増加に歯止めがかかり、改めて、環境負荷の人為的側面に注目が集まった。それとともに、感染症により悪化した景気の刺激とパリ協定に沿った持続可能な経済成長の両立を目指して、各国政府による大規模な財政支出や規制の導入に向けた検討が進められることとなった。各国の取り組みは、エネルギー源の転換・水素ステーション等の社会インフラの整備や、新規技術開発を目的とした財政支援、排出権取引等の環境規制の強化に大別される。特に先行するEUでは、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける炭素国境調整メカニズムを2023(令和5)年度から導入する見通しとなっており *1 、脱炭素に向けた企業の取り組みの優劣が、今後のグローバルな競争力を左右する可能性も高まった。日本においても2020年10月、菅義偉(すが・よしひで)内閣が2050年カーボンニュートラルを宣言。これを実現するため、10年間で総額2兆円のグリーンイノベーション基金や、初年度200億円の財政投融資を活用した脱炭素化支援機構の設立、初年度200億円の地域脱炭素移行・再エネ推進交付金の創設などが決定された。
当グループは、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の最終提言(2017年6月)に基づき、気候変動関連リスクを全社的リスク管理の枠組みの中で管理している。信用リスク管理においては、セクターポリシーを策定して温暖化ガス排出量の多い石炭火力発電所向けの新規融資は原則禁止とし、関連指標の定期的なモニタリングを実施している。2021年10月には全世界で加速する温室効果ガス削減等の社会課題解決に向け、「カーボンニュートラル宣言」を行った。社会の脱炭素化に向けて、投融資機能のみならず、信託グループらしい資産運用・資産管理ビジネスを通じて新たな市場・新たな投資機会を創出する「信託型金融仲介モデル」を推し進めることで、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を目指し、サステナブルな社会の実現に貢献していくこととしている。