- 第2編
- 第1章 - 専業信託銀行グループとしての挑戦 2011~2016
バリューチェーン一体化とリスクソリューションの本格展開
2014(平成26)年度にスタートした「中期経営計画(挑戦と創造)」では、2012年度から取引拡充に向けた検討を進めてきた「信託・ファンド」を競合先との差別化を図るための独自の強みと位置づけ、信託と銀行の「バリューチェーン一体化」による価値創造を目指した。信託(ストック)を基盤とし、銀行(フロー)で収益を得る、信託・銀行一体経営ならではの「ストック・フロー両立型ビジネスモデル」である。
グループ全体を俯瞰し、重複投資を回避しうる最適分業体制を構築。「信託&トレーディング」成長戦略として、国債(JGB)現物オプション、長期為替、通貨スワップ(CCS:Cross Currency Swap)などの強みを生かせる商品によって取引体制を強固なものとし、「オフバランスカストディビジネス」の創造に向けて、プロセッシング(金融規制強化、市場性取引事務、契約書管理)、リスク管理・時価評価の業務品質を徹底的に向上させた。
2012年度から取り組んできたリスクコンサルを核とした営業については、2014年度に「りすなび」をお客さま向けにリリースし、フォローアップ型リスクコンサルを展開しつつ、他のプロダクト営業への横展開を図った。また西日本エリアでは2015年10月、営業支援活動量の増大とお客さまとの接点拡大を目的に西日本営業チームを新設し、首都圏との比較で低位にとどまっていた為替、デリバティブ、特約付預金など市場性商品の拡販を推進した。
こうしてこの間、リスクコンサル型営業推進に取り組んできた結果、1,200億円の大手事業法人へのリスクヘッジ型商品提供などの実績をあげ、2017年2月にはマーケット業務開発ビジネスユニット内に専担組織としてリスクソリューション室を設置し、「リスクソリューション」として本格展開することとした。リスクソリューションは、将来の市場環境変化に伴うリスクシナリオなどの未来について語りかけ、お客さまの潜在ニーズを喚起し、課題を共有したうえでソリューションを共創し、フィデューシャリー・デュ―ティの観点を踏まえて提案を実施するものである。既存商品で対応できない場合は、ファンドとして提供する対象を適格機関投資家等に限定し、リスク種別のコントロールに適したデリバティブを積極活用したソリューションを開発した。
国内では2016年1月のマイナス金利導入の影響、海外では英国のEU離脱をめぐる国民投票や米国大統領選挙などによる政治リスクの高まりから、2016年度の金融環境は激変した。マーケット業務では、政策投資株式に対する財務ヘッジなどを目的に、「全社収益補完業務」を担っているが、同年度には不確実性の増大に鑑み米国債を購入し、ヘッジ比率を引き上げて株価リスク量の半減を図ったところ、米国トランプ政権発足後、金利は株価とともに急上昇し、業務開始後初めてのヘッジコストが発生。これを受けてヘッジ手段を金利(長期枠)から株式インデックス(財務枠)へシフトすることとし、翌2017年度以降、財務枠でのベア投信をヘッジの中心とした。