- 第2編
- 第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019
フィデューシャリー・デューティー等の高度化
2016(平成28)年、金融審議会の市場ワーキンググループにて、国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)等について審議が行われた。そこでは、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用等を行うすべての金融機関等がインベストメントチェーンにおけるそれぞれの役割を認識し、顧客本位の業務運営に努めることが重要との観点から提言がなされ、これを受けて2017年3月、金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定・公表した。その後、金融事業者の取組状況や環境の変化を踏まえ、本原則の具体的内容の充実や金融事業者の取り組みの「見える化」の促進などに関する議論があり、2021(令和3)年1月、本原則の改訂が行われている。
〔1〕フィデューシャリー・デューティーに関する取組方針の見直し
2017(平成29)年6月、当グループにおけるガバナンス態勢の変更、グループ各社の行動計画・行動指針の実施状況や外部有識者の意見なども踏まえ、フィデューシャリー・デューティーのさらなる浸透・実践やお客さま本位の業務運営の徹底のため、取組方針を一部改定するとともに、行動計画の見直しを行った。改定・見直しに際しては、利益相反管理委員会の委員の内定者である、神田秀樹氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)、細川昭子氏(ベーカー&マッケンジー法律事務所弁護士)から、「KPIの見直し等に際しては、今後の少子化・人口減少要因も含めた検討が必要」などの提言がなされた。続いて同年7月には、当社が指名委員会等設置会社に移行することとあわせて、任意の委員会として「利益相反管理委員会」を設置し、利益相反管理態勢の実効性等について検証するとともに、監督機能を強化した。なお、2018年6月には、運用事業の分社化なども踏まえ、取組方針を一部改定するとともに、三井住友信託銀行においても行動計画の見直しを行った。
〔2〕利益相反管理態勢の高度化
当グループでは、グループ各社およびその関係者が提供する多様な商品・サービスの提供に伴い、お客さまの利益を不当に害することのないよう、これまでも利益相反管理方針の概要を公表するとともに、この方針に則って、利益相反のおそれのある取引を適切に管理し、業務を遂行してきた。これらの取り組みに加えて、2017(平成29)年5月、グループ全体の利益相反管理方針を改定し、態勢の高度化を図ることとした。
〔3〕運用業務に関する利益相反管理態勢の高度化
資産運用を委託される責任ある投資家としてのスチュワードシップ責任、フィデューシャリー・デューティーの履行に対するお客さまの期待は大変高く、三井住友信託銀行は、お客さまがより一層安心して取引できるよう、利益相反管理態勢の整備・強化を進めてきた。しかし、金融サービスが専門化、複雑化するなか、社内の事業間、グループ会社間において、さまざまな利益相反が発生するリスクが生じており、一層万全な対策を講じるべく、2017(平成29)年1月、「運用業務に関する利益相反管理態勢の高度化方針」を策定した。
具体的には、運用業務各部に対する利益相反につながる懸念のある影響力行使等を防止するため、運用業務に関する利益相反行為に対するルール等の明確化やルールを逸脱した行為等に関する内部通報制度の新設等の実効性を高める施策を講じるとともに、利益相反行為の潜在的な可能性を減少させるため、運用業務各部との間で情報伝達・接触制限、人事異動制限などを行うこととした。
〔4〕議決権行使結果の個別開示
議決権行使、エンゲージメント活動等のスチュワードシップ活動に関しては、2017(平成29)年5月の日本版スチュワードシップ・コードの改訂により議決権行使の個別結果開示が求められていることも見据え、①議決権行使ガイドラインのより一層詳細な開示、②外部人材が過半を占める「スチュワードシップ活動諮問委員会」(2017年1月新設)への事前諮問に対する答申を踏まえた活動の実践、などにより、議決権行使をはじめとするスチュワードシップ活動の透明性を大幅に向上させ、利益相反管理の徹底を推進した。
なお、三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、および日興アセットマネジメントは、責任ある機関投資家の諸原則「日本版スチュワードシップ・コード」に則り、2017年より国内株式の議決権行使結果の個別開示を実施した。各社では、議決権行使指図に関する判断基準を議決権行使ガイドラインとして定めているが、議決権行使の透明性をさらに高めるべく、個別企業、個別案件ごとに開示することとした。