- 第2編
- 第2章 - The Trust Bankへの進化――「第2の創業」 2017~2019
リスクガバナンス体制の構築
〔1〕リスクガバナンス体制
リスクガバナンスは、コーポレートガバナンスの一部を構成し、リスクアペタイトやリスクリミットの明確化およびこれらのモニタリングを通じ、適切なリスクテイクや、リスクを特定・計測・管理・コントロールする枠組みである。当グループは、2017(平成29)年4月、グループ全体のリスクガバナンス体制として、各事業におけるリスク管理(ファーストライン・ディフェンス) *1 、リスク統括部およびリスク管理各部によるリスク管理(セカンドライン・ディフェンス) *2 、内部監査部による検証(サードライン・ディフェンス)の三線防御体制(スリーラインズ・オブ・ディフェンス) *3 を構築し、リスクガバナンスの高度化を推進した。
グループ各事業は、業務商品知識を生かして自事業の推進におけるリスク特性の把握を行うとともに、リスクが顕在化した際には現場レベルでのリスクコントロールを迅速に実行する。
リスク統括部は、取締役会によって決定されたグループ全体のリスク管理方針に従い、リスク管理全般を統括し、グループ全体を対象にリスクを特定・評価し、リスク管理プロセスを構築し、リスク限度枠の設定を行う。リスクが顕在化した場合の全社リカバリー戦略をあらかじめ策定する。リスク統括部およびリスク管理各部は、ファーストラインのリスクテイクへの牽制機能を発揮し、リスクガバナンス体制の監督・指導を行う。リスク統括部は、リスク管理の状況を経営会議、取締役会に報告する。
〔2〕リスク委員会の設置
2017(平成29)年6月の指名委員会等設置会社への移行に伴い、4月にリスク委員会を設置した。同委員会は、①当グループの経営を取り巻く環境、トップリスク、およびマテリアリティに関する事項、②当グループのリスクアペタイト・フレームワークの運営、リスク管理、およびコンプライアンス管理に関連する内部統制システムの実効性の監視に関する事項などについて、取締役会からの諮問を受け、その適切性等について検討し、答申を行う役割を担った。委員の過半数は、独立社外取締役および社外有識者とすることを原則とし、リスク委員会委員長は、当該分野に専門的知見を有する取締役である委員から選定することとした。
〔3〕リスクアペタイト・フレームワークの位置づけ
リーマン・ブラザーズの破綻に端を発した金融危機後、銀行の新たなリスク管理の枠組みとして世界的に注目されるようになったのが、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)である。銀行のコーポレートガバナンス強化の議論の一環として提唱された概念で、一般的に、銀行では事業計画策定時にどれだけリスクをとって、どれだけの利益を上げるかを決めるが、計画の実行段階においては、リスクはリスク管理部門、収益は経営企画部門、というように、別々に管理がなされる。これをリスクと収益を一体化して事業を運営する考え方である *4 。まず、リスクアペタイトとは、「自社のビジネスモデルの個別性を踏まえたうえで、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量」をいう。そして、リスクアペタイト・フレームワークとは、こうしたリスクアペタイトを「資本配分や収益最大化を含むリスクテイク方針全般に関する社内の共通言語として用いる経営管理の枠組み」である *5 。
当グループにおいても、リスクキャパシティの範囲内で、収益源泉とするリスク、一定水準に抑制するリスクおよび原則回避すべきリスクの種類と水準を決定するプロセスおよびそれを支える内部統制システムから構成される全社的な経営管理の枠組みとしてRAFを採り入れ、収益力強化とリスク管理高度化の両立を図った。
また、当グループは、リスク文化を「信託の受託者精神に基づく高い自己規律のもと、リスクの適切な評価を踏まえたリスクテイク、リスク管理、リスクコントロールを機動的に実行する当グループの組織および役員・社員の規範・態度・行動を規定する基本的な考え方」と定義するとともに、リスクアペタイト・フレームワークを明文化したリスクアペタイト・ステートメント(RAS)を策定し、グループ内のリスクアペタイトの運営に活用している。