- 第1編
- 第2章 - 国際化・自由化と社会の多様化 1975~1990
公益信託の取り組み
信託業界では財産管理機能の拡充を目指し、公益信託、特定贈与信託など公益的、他益的な信託商品への取り組みを展開した。
1973(昭和48)年5月、欧米で普及している公益信託の活用について、公益法人協会から信託協会に対し協力依頼があった。信託の使命が公益性にあると考えていた信託協会では、公益信託が信託銀行本来の業務である財産管理機能の拡充にも役立つとの観点もあってこの依頼に応じ、税制改正の要望を提出するなどその実現に取り組んだ結果、1977年5月に住友信託銀行、続いて同年12月に三井信託銀行が第1号公益信託を受託した。公益信託は、奨学金の支給、科学研究や国際協力事業への助成、教育振興、芸術・文化振興、社会福祉などに活用されている。信託業界では公益信託を「最も信託らしい信託で、信託制度の原点」と評価する声も強かった。
一方、特別障害者扶養信託制度(特定贈与信託)は、文字どおり福祉信託と呼ぶにふさわしいが、その実現の契機は信託協会の1975年度税制改正に関する要望にあった。同年4月施行の「相続税法」改正において、特別障害者に対する贈与税の非課税扱いが決定し、税法上の正式名称「特別障害者扶養信託」が制度化された。この改正により信託業界は1975年5月、特定贈与信託の名で取り扱いを開始した。