三井住友トラストグループ

第1章

専業信託銀行グループとしての挑戦
2011~2016

第4節 グループ総合力の発揮

第2章

The Trust Bankへの進化――
「第2の創業」 2017~2019

第2節 ビジネスモデルとガバナンスの変革

第3節 トータルソリューションの追求

第3章

新たな社会課題への対応
2020~2023

第2節 社会的価値創出と経済的価値創出の両立

第3節 新たな付加価値の創造

第4節 Well-beingの好循環を目指して

第2編
第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023

金融包摂の推進

金融包摂とは、公共的、社会的サービスの享受が制約されている人々を支援するために提唱されてきた社会包摂の考え方に沿って、金融面においてもすべての社会構成員に等しく金融サービスにアクセスできるよう支援するための取り組みである。超高齢社会において、金融取引における高齢者保護、高齢者向け金融サービス、高齢者の金融リテラシー等が課題とされているなか、当グループでは、サステナビリティ推進部が中心となって金融包摂の取り組みを行ってきたが、人生100年応援部創設により、その機能を集約、サステナビリティ推進部とは適宜連携を取りつつ推進している。

三井住友信託銀行では、相続や贈与、資産管理、住まいなどに関する商品・サービスや、とりわけ、高齢者が積極的に社会参加し続けるプロダクティブ・エイジング実現に向けた共同研究・情報発信など、信託銀行の持つ多様な機能やネットワークを活用したさまざまな取り組みを実施。特に、地域包括ケアシステムの重要性の高まりを受け、高齢者の資産管理を担う金融機関も重要な役割を果たすと考えられることから、地域包括支援センターとの連携や医療従事者が主催する事例研究会など、全国の支店で地域包括ケアの構築に積極的に参画している。

〈金融包摂推進の方針〉

  1. オンライン取引の拡充などを通じたアクセシビリティの向上
  2. 社会貢献を目的としたスキーム~公益信託~の提供
  3. 各種ローンにおける金融包摂の取り組み
  4. 「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ *1 」に基づく取り組み
  5. 融資取引の返済条件などに対する柔軟な対応(金融円滑化への取り組み)

「金融包摂のためのグローバルパートナーシップ(GPFI)」とOECDは、「高齢化と金融包摂」をテーマに議論を重ね、2019年6月、G20財務大臣・中央銀行総裁会議において、国際社会が直面する高齢化への課題と対応について、8つの項目からなる「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」が承認された。三井住友信託銀行は、これに賛同、8項目にそれぞれ対応した具体的取り組みを公表している。

〔1〕医療支援寄付信託

2021(令和3)年4月、三井住友信託銀行は、医療に関する研究を実施する大学を支援する「医療支援寄付信託」の取り扱いを開始。本信託は、「医療支援」という共通テーマのもとに参加した13の大学から、「未来医療の創生」「難病克服に向けた研究」「医療体制の整備」等の具体的な研究・活動を比較検討して寄付先を選択する信託商品である。あわせて、寄付方法に対するニーズの多様化を踏まえ、これまでの遺贈寄付に加えて、万一の際に財産の一部を簡便に寄付したいという想いに応える「遺言代用寄付信託〈愛称:未来への寄付〉」の取り扱いを開始した。

〔2〕中央大学との提携

2021(令和3)年4月、三井住友信託銀行は、中央大学研究開発機構と「高齢社会における信託活用のグランドデザインに関する研究ユニット」の設置に関する契約を締結した。本ユニットのモチーフは、高齢者が自らの意思に基づき、安心して幸せに人生を過ごすことができる豊かな高齢社会が実現できるよう、金融包摂を実現させるための手法を信託制度の新しい活用可能性の中に見出そうとするものである。新たな信託商品や新しいサービスなど、信託制度の新たな活用の研究と研究成果の社会への還元を通じて、信託を媒体とした全世代型の金融ライフプランニングの構築を企図している。

同ユニットでは、研究対象を信託に限らず、地域との連携に根ざした成年後見制度等の促進のための産官学によるシンポジウム開催や、国際シンポジウム「アジアにおける成年後見と信託の展開」への協賛・登壇、さらには研究対象を欧州(イギリス、ドイツなど)にも広げるなど、金融包摂のため高齢者の財産管理に関する信託・後見制度の活用を中心とした研究・普及活動 *2 をグローバルに展開している。

2023年10月、公開シンポジウム「超高齢社会の財産管理~後見制度と民事信託の理解と活用~」の模様がNHK Eテレで放映されるなど、テーマへの関心の高さが窺われる。

〔3〕認知症バリアフリー宣言

2022(令和4)年3月、日本認知症官民協議会が開始した「認知症バリアフリー宣言」に基づき、認知症バリアフリー宣言を実施。同協議会は、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる認知症バリアフリー社会の実現を目指して、2019(平成31)年4月、約100余の業界団体や関係省庁等の傘下により設立された。超高齢社会の進展を背景に、社会構造が大きく変化するなか、金融機関各社には金融包摂の実現が求められており、三井住友信託銀行は、認知症への事前の備えを提供すべく、商品開発、コンサルティングの高度化、地域連携などを推進している。

認知症バリアフリー宣言ロゴ

認知症バリアフリー宣言ロゴ

〔4〕「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える」

認知症などで判断能力低下後も安心して自分らしい生活を送るためには、「事前の備え」が重要となる。三井住友信託銀行では2018(平成30)年3月に「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える」を発行し、成年後見制度やその他の公的な支援の仕組み、およびそれらを補完する金融商品・サービスなど「事前の備え」の選択肢をわかりやすく整理した。また、2022(令和4)年3月発行の「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える3.0」では、日本で初となる、高品質の音声合成による音声アシスト機能 *3 を搭載し、各ページに配置された二次元コードをスマートフォンで読み込むことで、音声にて案内を聞くことができるようにし、さらに聞きやすいスピードや音声の選択も可能とした。

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「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える3.0」

「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える3.0」

「シニア世代応援レポート 認知症問題を考える3.0」

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〔5〕日本意思決定支援推進機構との連携

判断能力低下後も本人の意思を生活に反映させる取り組み(意思決定支援)を推進するため、一般社団法人日本意思決定支援推進機構に2018(平成30)年6月から正会員として参画しており、京都府立医科大学大学院におけるアルゴリズムを用いた革新的金融デジタル技術の研究開発によるイノベーションの推進をサポート。2021(令和3)年1月には「銀行ジェロントロジスト」認定試験の創設に携わり、金融業界全体の認知症対応力の向上にも注力している。

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