- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
虚偽勧誘事件の発生と内部管理態勢の強化
2021(令和3)年1月、三井住友信託銀行は、元社員(30代・男性)がお客さまの金銭を着服する不祥事件が発生したことを公表した。2020年12月、同社の元社員が複数のお客さまに対して、架空のキャンペーンを持ちかけるなどの方法により、お客さまの資金を着服または一時流用し、生活費や遊興費等にあてていたことが判明。事件判明以降、直ちに不祥事件に対応するプロジェクトチームを立ち上げ、事実関係の全容調査・検証、お客さまへの対応、ならびに不正の防止・検知の体制等の評価および見直しに取り組むとともに、捜査当局と協議のうえ刑事告発を行い、捜査に協力した。元社員(懲戒解雇)は2021年11月、詐欺罪の罪で逮捕されている。元社員が関与した不正事件の有無に関する調査の結果、着服の被害が判明したお客さまは22名、金額は約3億7,400万円となった。このほか、一時流用の被害が判明したお客さまは36名、金額は累計約4億5,360万円だった。
〔1〕被害調査
不祥事件判明後、三井住友信託銀行では元社員が過去に接触した可能性のある約2万2,000名義のお客さまに対し、外部弁護士と協議のうえ、面談、電話、ダイレクトメール発信等の方法を組み合わせて取引内容に不審な点がないかの確認を実施した。
〔2〕全店調査
本不祥事件判明後、元社員以外による同様の着服行為等の有無について、以下の全店調査を実施、本不祥事件以外の社員による着服等の事案は確認されなかった。
- 元社員が不祥事件判明時、管理職という立場でお客さまを担当していたことが不適切な行動に対する牽制機能に影響を与えた可能性があるため、管理職が直接担当するお客さまとの取引において、不審点の有無を確認。
- 元社員が現金を授受する際の社内のルールを不正に逸脱していたことから、お客さまからの現金や書類の預かり時に作成する預り証に関して、全店で保存されているものを対象として、発効途中で取り消した手続きについての不審点の有無を確認。
- 元社員が社内システムで着服・一時流用を行ったお客さまの情報を定期的に閲覧しているケースがあったことから、社内システムで他店のお客さま情報を閲覧しているケースにおける不審点の有無を確認。
〔3〕課題認識と再発防止への取り組み
三井住友信託銀行では、これまで社員による不正の未然防止や検知のため、各種ルールや仕組みを整備し運営してきた。しかし、現金の授受に関する管理や、管理職の不適切な行動に対する牽制機能、および不正防止・検知の観点での社員に対する行動・人事管理が必ずしも十分ではなかったこと、事務・営業に関する取扱ルールやモニタリングなど直接的・間接的統制手段に関わる制度設計や運営の両面に改善の余地があることを認識した。これらの認識を踏まえ、以下のように再発防止への取り組みを行うとともに、グループ横断によりグループ全体の業務改善を推進し(本節2「グループ横断による業務改善の推進」参照)、お客さまからの信頼回復に、全力を挙げて取り組んだ。
2022(令和4)年9月には、当グループの役員および社員の行動に関する指針として「私たちの行動指針」を制定(10月施行)。当グループのありたい姿の実現に向けて、適切に行動するための基本的な考え方を示し、業務のあり方や行動を見つめ直すきっかけとした。

「私たちの行動指針」