- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
ガバナンスの高度化とDXへの取り組み
わが国では、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を促すため、資本市場におけるさまざまな制度改革が重ねられている。一方、企業経営を取り巻く環境としては、サステナビリティへの取り組みや開示の深化が求められ、またインフレの高進や金融・経済情勢の不安定化、地政学リスク増大など不確実性・不透明性が増し、企業においては、常に変化し続ける環境やリスクと機会を的確に見極め、企業価値を向上させるためのガバナンスの高度化が一層重要となった。当グループでは、2021(令和3)年4月に証券代行コンサルティング部をガバナンスコンサルティング部に名称を変更し、ガバナンス分野への取り組みを強化した。
こうしたなかで、2020年度に議決権行使書集計問題が発生したことを受けて、委託会社を含むステークホルダーからの信頼回復に向け、証券代行業務の社会インフラとしての安定と堅確な基盤の再構築を目指し、2021年度には新たな議決権集計フローによって6月の総会を滞りなく実施。またコロナ禍によって社会全体のオンライン化が急速に進展したなか、オンラインでの株主参加を認めるバーチャル株主総会にも対応した。
2021年6月には、改訂コーポレートガバナンス・コードが公表されたが、これは、2022年4月に実施される東証の市場区分再編 *1 において、特にプライム市場への上場企業に求められる「より高いガバナンス水準」の具体的な指針としても活用される点で注目された。また同年3月には改正会社法が一部施行され、各種制度の変更に伴うシステム対応やガバナンス強化の必要性も拡大した。そして2022年4月には、法人向けサステナブルソリューションの強化および提供価値の拡大を目的に、証券代行事業は、法人トータルソリューション事業とともに「法人事業」として一本化され、ESG、スタートアップ企業などの成長領域の確立に向け、協働体制の強化が図られた。
2022年9月には、株式会社ケップルがスタートアップ企業向けに提供する株主総会・株主情報管理のオンラインサービス「株主総会クラウド」に対し、株式関連書式やコーポレートガバナンス関連情報のコンテンツ提供を開始。当グループは「SuMi TRUSTイノベーションファンド」(本節4「スタートアップ企業への支援」参照)を通じてケップルに出資を行い、スタートアップ企業の株式実務に関する書類作成やIPO準備をサポートしている。また、2022年9月の改正会社法で創設された株主総会資料の電子提供制度に対応し、2023年5月に開催される株主総会から「株主総会ポータル」(後述)を提供し、株主総会関連のDX化を促進した。
2023年5月には、コーポレートガバナンスや社長後継者計画、経営幹部の評価・育成などの経営人材に関する包括的なコンサルティングサービスを提供する株式会社ボードアドバイザーズとの間で、同社が発行する株式の 25.5%の取得を伴う資本業務提携契約を締結し、「取締役会の実効性評価」「役員報酬の設計」「投資家との対話」のサービス品質を高度化するとともに、「後継者計画の策定」などの指名・サクセッション領域について、同社が有する高度なノウハウを活用したサービスを展開することで、ガバナンス強化に向けた従来以上のフルラインのコンサルティングの提供を可能とした。
なお、証券代行業務収入については、中長期的な人口減に伴う株主減少や、会社法改正を含む株式事務のペーパーレス化の進展・事務量減により、漸減していく見込みである。安定的な株主実務・総会サポートは不変ながら、ペーパーレスに積極的に取り組み、株主と発行会社との双方向のエンゲージメントを促進していくことで、デジタル優待やIRとしての付加価値発現等による収入増を目指している。
市場の流動性を高め、市場を活性化させることを目的に、市場を第一部、第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース)から、プライム、スタンダード、グロースに再編。コンセプトを明確化し、第二部、マザーズ、JASDAQの位置づけの重複が整理された。

ボードアドバイザーズとの提携効果