- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
資金調達・運用の構造変化とALM管理体制
ALM *1 とは、すべての信託・預金・貸金・債券等の金利・期間を把握したうえで、マーケットが変動した場合に収益がどう変化するかを予測し、全社的な運用・調達方法を企画・立案していくことであるが、金融自由化の進展に伴って、貸出・預金等の金利は次第にマーケット金利との連動性を強め、マーケットでの運用手法も複雑化した。このため、銀行の収益は金利・為替・株価等、マーケットの動向に大きく左右されるようになり、マーケットの変動リスクを最小に抑えながら、安定的に最大の収益を狙うための管理手法として、ALMの重要性が高まった。
また、リスクアセットを分母、自己資本を分子として算出されるバーゼル規制をクリアするための対策として、総資産を圧縮するために貸出債権の流動化や不良債権の売却・償還に加えて、先物・先渡取引、オプション、スワップなどバランスシートに計上されない「オフバランス取引」の活用が有効とされたことも背景として、金融各社は1990年代半ばごろからALM体制を強化し、内外の経済情勢や各種マーケットの変化が資産・負債構成や収益に与える影響を機動的に判断し、適正なリスク・リターンを確保する体制を整えた。
なお、バーゼル規制における最も基本的な対策としてROA(総資産利益率)、すなわち収益性の向上が金融機関の中心の課題となり、より利益率の高い事業に資産を投入し、その利益で自己資本を増強して新たな資産を増やすということが必要となった。