- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
5 新時代の信託事業の萌芽
日本版マスタートラストの導入
年金信託や証券投資信託などの分野で機関投資家を中心とした顧客の投資活動が多様化、高度化するなか、資産管理業務において最新の金融・情報テクノロジーを駆使し、システム・事務体制を間断なく構築・更新していく高度な資産管理インフラが必要不可欠となった。また、米国では複数の運用機関に委託された年金資産を単一契約に基づいて一元的に管理するマスタートラストという制度があったが、日本の企業年金では共同受託方式がとられ、年金資産の運用や管理を複数の受託機関が別々に行っていたため、運用・管理の効率化を図るためマスタートラスト導入に対するニーズは強かった。
1999(平成11)年、政府の規制緩和推進計画に「日本版マスタートラスト」導入が盛り込まれ、2000年にマスタートラスト業務が解禁された。そこで、住友信託銀行は2000年6月、高度な資産管理インフラを構築し、信託銀行の新たな地平を切り開くべく、有価証券等の資産管理にフォーカスして業務を行う「資産管理専門信託銀行」を設立することとし、年金信託の受託残高がトップであった大和銀行と共同で日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(JTSB: Japan Trustee Services Bank, Ltd.)を設立した。その後2002年1月には中央三井信託銀行が対等の精神で参加することが決定、同年9月に三井トラスト・ホールディングス *1 が出資し、3社の均等出資による資産管理会社となった。
JTSBは、住友信託銀行にとっても三井トラスト・ホールディングスにとっても過去に例を見ない最大級の合弁事業であり、日本最大規模だった受託資産規模が3社の共同事業となったことによりさらに拡大し、日本を代表する資産管理プラットフォームが構築されることとなった。
なお、2000年に日本マスタートラスト信託銀行(三菱UFJ信託銀行および日本生命、明治安田生命)、2001年には資産管理サービス信託銀行(みずほ信託銀行および生命保険4社)も設立され、その後2020(令和2)年に日本トラスティ・サービス信託銀行は資産管理サービス信託銀行と統合し、日本カストディ銀行となっている。

日本トラスティ・サービス信託銀行のオープニングセレモニー