- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
米国サブプライムローン問題とその影響
2008(平成20)年3月期には、米国サブプライムローン問題の影響を受けた海外投融資資産の損失処理に伴う実質与信関係費用が拡大。サブプライムローンとは、米国の信用力の低い個人向け住宅ローンであるが、貸出の審査が甘くなり、信用力の低い借入人が増加し、2007年ごろから焦げ付きが目立ち始めた。このため貸出が減り、担保である住宅の価格が下落に転じ、大量のサブプライムローンが不良債権化した。さらに問題を複雑化したのは、サブプライムローンを複雑にパッケージし、リスクを見極めにくくなった証券化商品が、高格付、高利回りの金融商品として世界各国の金融機関に販売されていたことである。
サブプライムローンの焦げ付き増加により、同ローンを組み込んだ証券化商品の格付や価格は暴落し、世界各国の金融機関に大きな損失を発生させた。また、欧米機関が損失の埋め合わせのために保有株式、債券を売却したことにより、サブプライムローンとは関係のない金融商品にまで価格下落と格下げが連鎖的に波及し、金融機関の損失をさらに増加させた。こうして世界的規模で景気は急速に悪化し、欧米では金融機関の破綻が相次ぎ、世界経済は100年に一度といわれる危機的状況となった。
住友信託銀行、中央三井信託銀行とも、サブプライムローンの貸出自体は行っておらず、また、サブプライムローンを裏付け資産とした資産担保証券等の保有もわずかであった。しかし同問題が引き起こした海外投融資市場の混乱により、海外投融資資産の格下げや流動性の低下で価格が急落する事態となったため、その影響は、資金運用の一環として保有していたサブプライム商品とは直接関係のない証券化商品にも及んだ。
なお、サブプライムローン問題以降は、信用リスクに内在する価格変動リスクや商品流動性リスクなど、従来のリスク管理手法では管理不能であったリスクが顕在化してきたため、両社ともに、信用リスクと市場リスクにまたがるリスク管理態勢の構築など、リスク管理の一層の高度化を図った。