- 第1編
- 第3章 - 金融激動と業界再編 1991~2010
2 平成不況下の信託銀行ビジネス
与信業務の変貌
バブル景気は1991(平成3)年春にピリオドを打ち、日本経済は景気低迷期に入った。当初は実需中心の底堅い資金需要があったものの、景気後退を主因に企業の資金需要も後退し、長期貸出は不振となり、運用・調達のバランスは悪化していった。
一方で、景気後退により不良債権が増大したため、与信リスクの管理強化も必要となり、信託各社は資産の入れ替えによる良好なクレジット・ポートフォリオ構築に努めた。他方、制度面では、金融自由化の進展で貸出金利の市場金利連動化、低スプレッド化が浸透し、借り手優位の状況となった。そして大企業では直接金融化が進展し、銀行借入への依存度は低下していった。また、新会計基準の導入や時価会計への移行により、企業のバランスシートコントロールのニーズが強くなり、コンサルティング営業の必要性が高まった。
以上のように、経済状況や制度変更等を背景として、与信業務では、信託勘定での長期貸出を中心とした体制から、顧客の新たなニーズに応える体制へと変貌を始めた。