- 第2編
- 第3章 - 新たな社会課題への対応 2020~2023
中期経営計画の見直し
当グループが中期経営計画(2020~2022年度)を策定した2019(令和元)年度末、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についてのパンデミック宣言が出されており、一定期間の景気減速は見込んでいたものの、その時点では新型インフルエンザ同様、半年程度で収束することを想定していた。しかしその後、日本でも感染が拡大し、世界的に深刻な状況が続いたため、2020年7月から計数計画と各種施策に関する見直しを開始した。
またコロナ禍で行動制限がなされ、「ニューノーマル」に移行したなかにあっても、社会インフラを担う金融機関として滞りなく業務を遂行し、さらに強みを発揮していくため、「お客さま対応」「社内の意思決定」「社員の働き方」についても見直しが必要となった。
中期計画において前提としていた少子高齢化、グローバル化、デジタル化というトレンドに変化はない。しかし、コロナ禍で非対面コミュニケーションを余儀なくされ、デジタル化が大きく加速したため、陳腐化につながるコモデティ領域の拡大も想定された。そこで当グループは、既存領域の磨き上げとともに、高付加価値・差別化領域の開拓やデジタル等を活用した差別化コンテンツの拡大を推進。いかなる状況のもとでも持続可能性を追求するため、「新たな付加価値を創造しながら成長し続けること」の重要性に着目した。
さらに、中期計画策定時に掲げたものの、具体化に至っていない次のような「構造課題」についても具体化、加速を必要としていた。
- ニューノーマルに合わせたシステムなどのインフラ投資、機能補完やコスト削減を目的とする資本戦略は継続し、新たな働き方や顧客のチャネル選好の変化を踏まえた人員・拠点・システムに関するコスト構造改革に着手
- 業務基盤である経営品質(脆弱性が見られるグループ/データガバナンス)の高度化を具体化・推進
- 横断融合領域や役員特命事項も含めた当グループならではの運用ビジネスの成長戦略明確化
これを受けて、2020年7月の中期経営計画見直しのポイントを、①ニューノーマルにおける営業モデルの見直し、②コスト構造改革、③サービス品質・経営品質の高度化、④運用ビジネスの成長戦略の明確化とし、コロナ対応と構造課題対応の両立により、グループ経営の中期的な安定性を高め、社会インフラの一翼を担う信託グループとしての持続性の強化を目指した。
さらに2020年9月には、ニューノーマルにおける顧客対応を起点に各種施策を見直し、「顧客ニーズに合わせた営業・行動モデルの転換」「顧客に支持され、逆風に負けない持続可能性の向上」「新たな付加価値を創造し、成長し続けるビジネスモデル構築」の3つをテーマとした。具体的には、各事業においてアンケートなどを実施して、お客さまの新たな課題やニーズの把握に努め、個人向けにはオンラインによる世代別コンサルティングプラン改定、商品・サービスのオンライン申し込み拡充、各種セミナーのオンライン化、営業店舗のコンサルティング特化などを推進。法人向けには「働き方多様化」「人事戦略」「ESG戦略」に関するソリューションの具体化、仕組商品・合同金銭信託のオンライン約定システム導入、チャットボットやWebコンテンツ導入・活用などを展開した。
また、新成長領域では、オーナー向け資本コンサルティング、「ライフアドバイザリー支店」(2020年設置のプロジェクトチーム)による職域アプローチなどを本格化させ、スタートアップ企業向けエクイティファンドを立ち上げるとともに、UBSとの協働の取り組みを深化させた。