三井住友トラストグループ株式会社 取締役執行役常務(CSuO) 松本 千賀子

1. 地球レベルの社会課題と当グループのサステナビリティ経営

世界経済フォーラムの2025年版グローバルリスク報告書では、異常気象や生物多様性喪失等の環境リスクが、今後10年間の重要リスクランキングで最上位を占めています。「未来」という長い時間軸で考えるほどに、地球の存続に重要な課題は増す一方で、地政学的緊張の高まりや反サステナビリティの動きも起こり、企業のサステナビリティ経営は難しさを増しています。こういった時流においては、サステナビリティ経営の意義性を社内外のステークホルダーと再確認し、共通認識の下で進めることが重要です。

当グループにおいては、「託された未来をひらく」というパーパス実現のため、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を経営の根幹に置き、その実現を担うのがサステナビリティ経営としています。事業と社会的価値創出は分離した活動ではなく、ビジネスとして利益を上げながら社会課題を解決することが、課題解決の持続可能性をもたらし、それが民間企業である当グループのサステナビリティ経営の本旨であると考えます。

当グループには、三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメントおよびアモーヴァ・アセットマネジメントの中核企業三社があり、グループ内シナジーを活かしたサステナビリティ経営を展開しています。資産運用会社の二社は、共に世界最高水準の実績が求められる英国スチュワードシップコードの署名機関に承認されており、その高いクオリティに裏打ちされたエンゲージメントにより、サステナビリティ経営のあるべき姿に向けて日本企業を牽引しています。三井住友信託銀行は、環境・社会・ガバナンスの各分野において、信託機能を活かした多様なソリューションを提供し、法人企業のサステナビリティ経営高度化を具体的に支援しています。よって、当グループのサステナビリティ経営は、自社の価値向上のみを意図するのではなく、広く日本企業の無形資産価値向上の実現を目指すものとして推進してきています。

2. 日本企業のサステナビリティ経営を支える当グループのソリューション

環境分野では、脱炭素に関する多様な取り組みを行っています。2024年には、独立系のサステナビリティ・アドバイザリーではグローバル最大級のERMグループとの合弁会社であるERM SuMi TRUSTコンサルティングを設立しました。法人のお客さまに、脱炭素化戦略策定やアセットのグリーン転換を含む事業の脱炭素化、国内外の脱炭素関連規制対応等にかかる支援を行い、国内トップレベルの脱炭素アドバイザリーを提供しています。加えて、住友林業株式会社との共同出資による日本森林アセット株式会社も設立しました。同社では人工林の伐採跡地を取得して再造林を行い、将来のカーボンクレジット創出も視野に入れた循環型林業の促進に取り組んでいきます。サステナブルな森林管理は、生物多様性保全の観点でも重要な取り組みになるであろうと考えます。また、2025年には生物多様性対応のネイチャー・インパクトファイナンスを開始しました。法人のお客さまの生物多様性に関する取り組みを支援する融資商品で、三井住友信託銀行のサステナブルファイナンスのラインアップを拡充しています。

社会分野における当グループの金融包摂活動は、研究開発活動と政策アドボカシー活動により日本の金融包摂政策の高度化をサポートしてきました。世界では、貧困層や女性、社会のマイノリティの金融アクセスが金融包摂の課題として認識されていますが、日本においては金融サービスへのアクセスは既にかなり進んでいます。高齢化が進む日本では、高齢者層にとっての安心・安全な金融アクセスが課題で、当グループは、この分野での金融包摂活動を行っています。近年、他の先進国や開発途上国においても、高齢化は進んでおり、当グループを含む日本の金融機関の取り組みが、将来世界の高齢者層の金融アクセス問題の解決に役立つことになるでしょう。また、資産運用立国を進める日本では、若年層向けの投資教育のさらなる拡充も重要で、今年度以降はグループ中核三社で推進していきます。

ガバナンス分野においては、三井住友信託銀行が、サステナビリティに関する設問を含む「ガバナンスサーベイ®」を2017年度以降実施しています。本サーベイは、この分野においては日本最大級の調査で、2024年度調査では上場企業のほぼ半数にあたる約1,800社の法人のお客さまの回答を分析し、その結果や示唆を還元しています。また、取締役会の実効性評価や投資家との対話を支援するコンサルティング・サービスは多くの企業に活用されています。これらの取り組みは、当グループの資産運用会社による高クオリティのエンゲージメントと相まって、日本企業のガバナンス向上に寄与してきたと自負しています。

3. 「託された未来をひらく」ための責任

私たちが「今この時に」生み出す社会へのインパクトが、未来の豊かな暮らしを創ります。日本も、第二次世界大戦直後は貧困を含む多くの社会課題を抱えていましたが、先人たちによる未来を拓く努力により、今の私たちはGDP世界第4位の経済的豊かさを享受しています。また、今年は三井住友トラストグループの創業より101年目になりますが、当グループの100年は、自らの成長だけを求めてきた歴史ではなく、人を育て広く社会を豊かにする営みを継続する中に、100年間にもわたる持続的成長を遂げてきたと、私は理解しています。今の自分たちのことだけにとらわれるのではなく、過去に感謝し、未来をひらく。そして、自社の成長だけではなく、日本社会と世界の持続可能性(サステナビリティ)に寄与することも自らの責任とすることが、私たち一人ひとりの人生と自社の存在を、未来にかけて活かし続けるものであると考えます。

2025年3月末現在

取締役執行役常務(CSuO) 松本 千賀子

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